私が、以前在籍していたジムに少年はいたー。
まだあどけない高校生になったばかりのその少年は、いつも夢を語っていたー。
「ぼくは強くなって、有名になりたいんです!」
何度も何度もことあるごとに語っていたー。
あんまり言葉に出すと逃げていくからあまり言わないほうがいいといったこともあったー。
それでも夢をかたり少年はキックボクシングに挑戦し、勝ったり負けたりしながら前に進んだー。
純粋な素直な力をもったその少年に味方する人も増えて練習環境も整っていたー。
特にかってでて目をかけているコーチがいたため、私は遠慮し、とくにテーマがあるときや、ここは放っておけないときのみアドバイスし彼は素直に吸収し技を自分のものにしていった。
左が使えないときの右のインパクト、パンチだけでは勝てないときのローキックの利かせ方、点でなく面でとらえるヒジの打ち方ー。
貪欲に吸収し武器にしていったのだー。
そして、ここが勝負の日本王座トーナメントの準決勝のとき、苦手な防御一辺倒のポイント狙いの選手に苦戦していた。
顔からはあきらめモードが見えていた。
その日は別の選手についていて彼のセコンドチームではなかったが、おもわずインターバル中にコーナーに駆け寄り、「○○○、何やってるんだ!あきらめるな、ここで終わっていんのか!おもいっきりやってやれ、なんのためやってきたんだ!遠慮せずおもいっきりやってこい!」と叱咤したー。
次のラウンドで「ウオー!」と叫びながらヒジをふるい、眼底骨折させ見事KO勝ち、決勝で順当にかち日本タイトル奪取した。
そして、経験を積み、苦い思いや栄光を味わい、その後は最近見事世界王者になったー。
身体能力が際立っていたわけでもなく、吸収力が優れていた訳でもなく、彼のずっと言いつづけていた、「僕、強くなって有名になりたいんです」の言葉と、私もふくめみな味方にする素直な明るい性格が現在の栄光を作ったのでしょうー。
私は新人の途中で手を貸したにすぎませんが、私がでてからも会長や、周りが信頼関係を持ってバックアップしリングに立たせていたことが現在の栄光で大きいでしょうー。
明日はそんな彼の晴れ舞台ですー。
関わった人間としてしっかり見届けてまいります。